好きなものだけ

インテリアを学ぶ大学生が建築にハマってしまった。見たときの写真や感じたことを記すブログ。

栄 中産連(ちゅうさんれん)ビル

栄駅から徒歩10分ほどにある、研修場所として主に使われる、中産連ビルを見てきました。

 

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設計は坂倉準三です。

 

 

以前、「名古屋渋ビル手帖」を読んでこのビルの存在を初めて知ったのですが、今回訪れる為に改めて調べたところ、設計が坂倉準三だったことをすっかり忘れていて。

今回、別件で栄まで用事があったのでついでに見てきました。

 

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出来町通りという出木杉くんみたいなネーミングの通りを通ってくると、左手に見えてきます。

窓が特徴的なファサードです

 

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遠目は緑っぽく見えるものの、近くで見ると様々な色の種類を使ったタイルで構成されていることがわかります


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よく見てみると、タイルの並びが縦になっているところが所々あります。

 

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上の部分、中心部分、下の部分が縦模様になっているようです。

 

外観もほどほどに中へ。

 

1階 エントランス

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奥には「永原歯科」という看板が見えるように歯医者が入っていたのですが、既に7月に閉業してしまっていたようでした。

右手にも「ボタンcafe」という喫茶店が入っていたのですが、休業していました。

施設の方に聞くと「以前はやっていたんですけど、しばらくはお休みするみたいで…」とのことで、休業は今日限りのことではないようです。

そのため、人がいるのは1階奥の事務所部分と、2階で講義か何かをやっていた所のみで、なんだか寂しい印象を受けました。

 

さて、この建物、外壁の他に何が素晴らしいかというと

階段です。

 

階段

 

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正面から
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前にせり出してくるようなデザインで、見ていると目が錯覚してきます。

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横から。

 

まさか、こんな方法で階段の形をくっきり示すことができるとは…。驚きでした。

 

 

 

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階段

奥はテーブルなどが置いてある休憩スペースです


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木製の触り心地の良い手すり

 

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手すり 断面

 

手すりには木製のものが使われていて、表面はとても艶やかで、触り心地はすべすべ。最高でした。

材はマホガニーほど高級なものは使ってないんだろうけど、チークとか…を使ってるのではないでしょうか…。

もしわかる方などいらっしゃいましたら教えていただけると幸いです

 

地下1階へ

建物は地下1階+地上4階建となっており、どこの階も会議室が4、5部屋ある、という感じです。

上も気になるところですがまずはこのまま地下へと降りてみます。

 

 

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見上げてみてももちろん美しい。

階段の踏面・蹴込み部分は外も緑とも言えない色が付けられているのですが、少し赤みを帯びた手すりと、階段本体の白っぽい色と見事にマッチしています。


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茶色のラインを入れているのがかっこいい

 

 

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地下の空間はなんだか薄暗い…。

一階の光で満ち溢れた空間とは対照的に、地下で使用しているものは暖色の間接照明のみ。

もう少し明るい雰囲気にしてもいいと思うのですが…

 

エレベーター
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エレベーター。


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三角のボタンが可愛い…!

 

乗った感想はまた後ほど。

この後はまた1階へ戻り、2階、3階…と上へ向かっていきます。

 

 

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2階に上がる時の写真

 

しかし不思議なのが、踊り場の壁に設けられている額縁には何も絵が入っていないこと。ああこれが芸術なのかなー(てきとう)

 

とりあえず、2階へ到着。

 

2階

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こちらも2階と同様、前面に窓がとられていて光が降り注いでいます。


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すべすべ〜


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階段の裏側

 

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横から。

 

錯覚効果は復活していて、 むしろ1階の時より光が近い位置にあるので陰影もより強調されている気がします。

 

 

階段を登って右手は自販機と休憩スペース、奥には大きそうな会議室。左手にはさらに空間が続いていて、いくつも部屋が入っているようでした。

 

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2階廊下

 

おお、外から見た時のあの窓の形が…!

Pタイルに反射して形が写り込んでいるのもなんだか素敵だなぁと思いました。

Pタイルは全部で7枚と3等分にしたくらいのものが一枚。てきとうですが、この空間の幅としては2400-2500程度かなと。

会議室を使うために大勢の人が出入りすることを見込んでの幅だと思うのですが、窓の寸法ともバランスのとれていて、広すぎず狭すぎない、ちょうど良い広さだなと感じます。

 

壁をよーく見ると、1mほどの高さのところで色が切り替えられています。ツートン仕様。

 

しかし、奥の窓から入る明るさに対し、室内の雰囲気がちょっと暗めな気もする。

 

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タイル

 

窓側に近づいて初めて気がついたのは、隣の新館との距離がまあまあ近いこと。

 

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        新館←                                     → 本館(今いる側)

外から見るとこんな感じ。

隣のビルの方がはるかに背が高いのにあれだけ光が入るものなのかと不思議に思ったものです。

隣の建物との高さの比較を撮るのを忘れていたのですが、一応冒頭で建物全体を写した時に後ろ側に写っているので確認はできます。

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2階の会議室では、集まり…かなにかが開かれていて写真を撮っていると中からぞろぞろと人が出てきたので足早に3階へと避難しました。

こういう時すごく奇妙に見られがちなのであれですね、気まずいです。

 

3階

3階の階段の仕様や平面としては2階とほぼ変わりないです。

しかし、3階フロアから4階フロアにかけての階段を撮っていたところ、階段の仕上げが変わっていることに気づきます。

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緑のカーペットのようなものが敷かれています


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3階まで階段を登って来ましたが、結局額縁には1枚も絵が入っていませんでした…。

階段は今までのタイルのものとは違い、カーペットが敷かれたような感じだったのですごく踏み心地が良かったです。今まで登ってきた分の疲れが取れた感じだったので、もしかするとこれを狙っていたのかも。

 

4階 

4階にあがってきたときに室の匂いが今までとはちょっと古臭い感じの匂いに変わります。あまり使われてない空間が発する匂いかなーと。

地元の、あまり人が出入りしない図書館と似たような匂いに感じたので、もしかするとこの匂いのもととなる建材とかがあるのかもしれないですね

 

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友人が写り込んでいる写真しかなかったのでモザイクが濃いです、すみません

 

4階は天井高まである大きな扉のついた会議室が一つと、写真の右手に何かの部屋が一つ、左手に女子トイレ男子トイレがそれぞれあるのみでした。

 

窓の向こうは庭園…(?)のような空間があって、非常時のみ立入れるという感じでした。

 

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壁の謎の出っ張り

 

4階部分のみ、壁からこの変わった出っ張りが出てきていました。

梁が出てきているだけなのかなと思ったのですが、少しアールも付いているので装飾目的につけたのかな、と思います…。夕方になったら西陽で上手いこと影になったりするのでしょうか…

 

さて、あらかた見終わったのでエレベーターで一気に下まで降りることに。

 

ポチッとなー。

 

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あっ赤いん、だね…。

押し心地は軽く「キュピッ」と言いそうな感じの深い押し心地のある気持ちいい感じ。

こういうのすごく好きで何回でもキュピキュピしたくなります。

友人もいたので衝動を抑えて乗り込みました。

 

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中は広がりを感じるような天井に。

 

チンという軽快な音とともに1階へ到着したことを知らせられます。

 

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よきエレベーターでした。

 

 

 

全体的に見て、窓が採光的な意味で役に立っているかというと微妙な感じだなという感想です…

あれだけ窓が入っていても廊下部分で窓が出てきたのはほんの一部のみ。ほとんどは室内側に窓が出てきているのだと思うのですが、部屋を閉め切っていてはほんの一部の窓と雰囲気薄暗い照明しかないので…。

しかも、室内側で窓が集中しているとすれば、パワーポイントなどを使った会議の時は、反射どころで、ほとんどカーテンを閉めきることになるのでは。しかも窓の数自体かなり多いから厚手とかになりそうだし。

 

この中に入っている会社の株式会社リーム中産連の設立が1969年だったので、おそらく施工もその頃だと思うのですが、パソコンを使うことなんてやっぱり想定していないわけで…。外から見た時もほぼ全面カーテンが締め切られていて、最初見たときに「あれ、これやってるの?」と感じたのもこれのせいかなと思います。

 

あとは照明。晴れた日は窓で補う分、曇りや雨の日、夜…など満足に陽が出てこない時もあるわけで。

そうした時に、普段晴れの日に窓だけで取っていた採光と同様に明るくすることのできる人工照明がないと、時によってすごく居心地の悪い建物、という印象に傾いてしまうのではと感じます

 

照明計画って大事だなーと思った建物の一つでした。

 

たてものエピソード

今回、あの錯覚を起こす階段を見て、やっぱり近代建築の階段巡りはやめられないな〜と改めて感じたものです。

前回は丸栄の階段を紹介しましたが、その時、たてものエピソードにて目黒庁舎の村野階段を夏に見にいく予定だと書いていました。

見にいったことには見にいったのですが、拙宅としては期待しすぎたのか、あまり魅力的に見えない階段でした。

ブログを書き悩んでいたのもこれが原因で、何度も下書きは書いていたのですがどう頑張ってもボロクソにしか書けないんです。目黒庁舎好きの方には申し訳ないのですが…。

 

やっぱり感じたのは、どれだけ階段単体にこだわったとしても場との調和がとれていないと美しさはないということ。

 

ショックであったのと同時に自分の中で建物に対する見方を変えて行かないとなと思った大切な建物でもあります。

 

やめられないなあ、建築。