名古屋 丸栄百貨店
丸栄百貨店が6月いっぱいで閉店すると聞いたので見てきました。
目次
建物紹介
名古屋市 栄 にある百貨店で、1943年から今年まで75年間営業されてきました。
正面から。三角形の影が美しいですね
サカエチカとも直接繋がっており、比較的アクセスは良い方だと思います。
下調べした際は「行きにくい」と書いてあったので街から外れたところだと思っていました。
設計は村野藤吾さんです。
東郷青児 エレベーター
果物籠を持った女性と、ロングハットの女性が描かれたモダンな絵。
丸栄百貨店を語るに外せないものですね!
私が写真を撮りにきた時も年配のお客さんがどんどんきてエレベーターをバックに写真を撮っていました。
「なくなるなんて、寂しいねぇ」「昔から当たり前にあったけどもう見れなくなったらと思って急いで見に来たの!」なんて、店員さんと年配の方との会話も聞こえてきました。
デザインは東郷青児のものです。
丸栄と東郷青児との関係性がよくわからず、調べてみたものの「当時の記録が残っていないので理由はわからない」とのこと。てっきり出身地かとも思っていたのですが、出身地は名古屋とは遠く離れた鹿児島。 うーん。(完結)
丸栄のあゆみパネル展
7階では「丸栄のあゆみパネル展」が開かれており、丸栄で使われた紙袋やモザイクアートで描かれた丸栄百貨店、本店の模型が展示されていました。
模型は店舗の奥まで見通せるくらいに細かく作られており、実際の店舗内と比較しながらじっくり観ていました。
壁画も実際のものと忠実に作られています
手前の青い球形をしたものは、クリスタル広場のオブジェみたいなやつでしょうか。
右下にちらっと見えていますが、地下鉄まで再現されているんですね。
きっと、模型を製作した方々も丸栄の閉店を惜しんでいるのでしょうね
さて、ここから下へ降りるようにして建物内を見ていきます。
階段
曲がり部分の装飾が村野さんらしさを感じます。
これはすごいですよ…!先程の装飾の部分が手すりの間から見えていますが、そのタテの位置がぴったり合っています。
上から覗き込むと、何だか階段に吸い込まれてしまいそうな変な感覚に襲われました。
揃っているのはタテだけではなく、ヨコもきっちり。美しいですね…。
いやあ、なんて美しいんだ…。(2回目)
本当に、ずっと見下ろしていても飽きない光景でした。
階段室 空間
階段の断面は、段鼻が丸みを帯びたシンプルなもの。
一応、下からも見上げて見ましたがまあこんな感じなので見下ろした時ほどの感動はなく…。
というか、意外と施工雑なんですね…。
大理石が使われています。
梁が出てくるところでは端の部分に斜めの枠(?)がつくようになっていて、かっこいいです。
むき出しそのものにするのではなくこういった細かな装飾をつけるのも村野さんの建築の素敵なところだと思います。
じっくりと階段を楽しんだ後は、店内の様子も見てきました。
入ってるお店は
「いつの時代の服を売ってるんだ…?笑」と思わず思ってしまう店が多く、
バーゲン中でも何も買うこと無く店内をぐるぐるしていました。
そこで見つけたエスカレーターがヤバかった…。!!!
エスカレーター
手すり下のガラスのところが光ってる…!!!
しかも丸みを帯びた面白い形。
これは“イイもの”に違いない…!
見下ろしてみてもカッコいいです。
裏側の写真。球型の照明と真っ直ぐに伸びて行くラインは近未来的なかっこよさがあります。
前に一度Twitterで流し見程度に見ていたのですが、実際見ると思わず「あっ」と言ってしまうほどにインパクトのあるエスカレーターでした。
ディズニーランドのアトラクションに向かう途中のエスカレーターにありそう(笑)
丸栄百貨店は6月30日に閉店し、これからは解体へと向かっていきます。
解体工事は9月から入り、夜間に工事を進め、完全な解体までに1年3ヶ月ほどの期間を見越しているそうです。
店内の様子はもう見ることはできませんが、壁画タイルだけでも解体までに足を運んでみてはいかがでしょうか。
ちなみに、壁画やエレベーターの扉絵に関しては、まだ可能性段階ではありますが保存の方向で考えているようです。
個人的にはエスカレーターも階段もなにもかも残して置いて欲しかったのですが、解体の理由に「震度6以上の地震に耐えられない恐れがある」という点もあるため、仕方がないのでしょう(T ^ T)
たてものエピソード
この記事を書く際に丸栄のことについても村野さんのことについても色々と調べていたのですが、
どうやら村野さんの設計では階段にこだわった建物が多いようです。
こちらのサイトを拝見。
「私はかどがあるのがきらいなんです。私はもうどれでもみんなかどを取ってるんです。それで丸くする癖がありますね。
近代の科学や工業がもたらす精密さや、幾何学的な直線直角性といったものを、外壁面の表現においてできるだけ遠ざけ、それをもっと人の手や身体の痕跡を残したい、という村野が持ち続けてきた建築美学の実現
確かに、階段の段鼻の部分に丸みをつけている珍しいデザインからも、その癖が伺えますね。
階段って、本当にこだわりが見えるところだと思うんです。
私もある建物の階段を見たことをキッカケに、建物探訪をする際は必ず階段の断面を撮るようにしているのですが、
階段の表情は様々なんだなと本当にしみじみと思います。
荒々しくも力が溢れてくるような石段だったり、遠くから見ても明快に色分けされている繊細な美しさがあったり、螺旋階段でも少し円が歪んだものだったり…。
まだ実際の工事の際のエピソードなんて聞けていないのでわかりませんが、やっぱり設計者のこだわりとか、施工者の誇りみたいなものがあったのではないでしょうか。
いや〜、こういうのプロジェクトXみたいな感じでやってくれないかなほんと。
最近はこんな感じで階段を見るのにハマってきた感じです。ようやく自分の好きなものが定まってきたようで、物凄く楽しいです。
夏にひとり旅をしにいきますが、その際も村野さん設計の目黒庁舎に足を運んでみるつもりです。ルンルンですね。
旅から帰ってまたバイトしてお金が貯まったら、「動線の美学」も是非とも買って読みたいところです。